猫がいなくなった

 猫が一匹居なくなってしまった。お盆休みの頃からである。2年前に行きつけの動物病院で貰って来た白い猫で、名前は“ピッツァ”、通称“ピー”である。鳴き声は「ニャア」ではなく、「ピー」と鳴く、「ピー、ピー」と呼ぶと「ピー、ピー」と応える人懐こいやつだ。たまに外泊をする事はあっても、朝には「ピー、ピー」と鳴きながら帰って来て、餌を“ワッシ、ワッシ”と勢いよく食べた。丸1日帰って来ないので嫌な予感がした。3日、4日と経つと落ち着かなかった。妻や息子も同じく落ち着かない様子だった。7匹いても、一匹でも居なくなると喪失感は大きい。近所の人から「可愛いからと誰かが連れて行ったのでは」と言われたが、とても許せる事ではないが、これなら何処かで元気でいると思い、悔しいがなんとか我慢が出来る。お盆なので、普段は開けない納屋とか蔵に入り込んでしまい、知らずに閉じ込められたのではなどと、暑い日が続いていたので、これが一番心配だった。居なくなって3週間近く経ったが、「ピー、ピー」と鳴きながら帰って来るのを待っている。3ヵ月経っても、3年経ってもあきらめずに待っているだろう。と、ここ迄書いて気分が鬱(ふさ)いできたので書くのを止めた。

 

 翌日、私は田に入っていた。腰の辺り迄伸びた稲の間に頭を突っ込み、土の付いたまま根っこから雑草を引き抜き畦に放り投げていた。何度目かの時、放り投げた先を見ると白い猫が歩いていた。「あっ、ぶつかる」と思ったと同時に「ピー、ピー」と叫んでいた、白い猫も「ピー、ピー」と応えて鳴いた。庭にいた妻は急いで駆け寄り、抱き上げ家の中に連れて行った。

 

 “ピッツァ”が帰ってから2週間経ち、“ピー”も落ち着いた生活をしているが、以前みたいに遠出はしなくなり、せいぜい家の周辺で遊んでいる。帰ってからの3、4日は家から出ず、餌を食べては眠り、起きては食べるを繰り返していた。痩せてバサバサだった毛も、今は以前の様に戻って来た。居なくなっていた3週間、どの様な目に遭い、どんな冒険をして来たのか聞けるものなら知ってみたい。それにしても、今回の様に色々な事があるが、猫と一緒の生活はやめられない。

 

P.S.

 お盆の前にうちのホームページが新しくなりました。今迄、一部の方々から自分のパソコンでは見れない、スマホでは見れない等々のお叱りを受けておりましたが、それも漸(ようや)く解決しました。これは東京でデザイン会社を経営されている常連の片岡さんが御尽力をして下さったお陰で、スウェーデンの出張やらでお忙しい時期に、パソコンのパの字も知らない私を相手に、何とかお盆の前迄にと御好意でやって下さいました。誠に有難い事です。